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古美術門運孔のよもやま話~受け継がれる心~

古美術門運孔の更新担当の中西です

 

 

~受け継がれる心~

 

 

日本の古美術には、単なる美しさを超えた“心”が宿っています。
それは「侘び寂び」「陰影」「静寂」など、言葉にできない感覚の世界。
古美術商の仕事は、その心を守り、次の世代へ伝えていくことです


日本の美意識を読み解く

たとえば、茶道具に見る“侘び”。
華やかさよりも、不完全さや不均衡の中に美を見いだす感性。
釉薬のムラ、欠けの補修、土の色合い――
それらは欠点ではなく、「人の手と自然が調和した証」。
この美意識こそ、千利休の時代から受け継がれてきた日本独自の美学です。

古美術商は、こうした精神を理解したうえで品物と向き合います。
たとえ見た目が地味でも、「この器には心がある」と感じたら、それが価値になる。
その判断には、単なる知識ではなく、“文化を愛する心”が必要です。


美は「語り合うもの」

お客様との対話も、古美術商の大切な仕事の一つです。
美術品の価値を説明するだけでなく、
「この器を作った人は、何を想っていたのか」
「この掛軸を飾る空間には、どんな静けさが似合うか」
そんな話を交わす時間が、何よりも楽しい瞬間です。

美術とは、“見るもの”ではなく“語り合うもの”。
その対話の中で、お客様が新たな発見をし、作品が新しい命を得るのです。


次の時代へ、伝える責任

古美術商の使命は、過去の品を未来へ受け渡すこと。
それは単に販売するという行為ではなく、
「この作品を理解し、大切にしてくれる人に託す」という思いです。

時代が変わり、生活様式が変わっても、
“美を感じる心”は決して失われません。
だからこそ、古美術商は今も静かに、その心をつなぐ架け橋として存在しています。


まとめ

古美術は、時間を超えて人と人をつなぐ“心の文化財”です。
見た目の価値だけではなく、その奥にある哲学を感じ取ること。
それが日本人の美意識であり、古美術商が守り続ける使命です。
私たちはこれからも、静かに、丁寧に、“美の心”を伝えていきます