古美術門運孔の更新担当の中西です
~美の取引~
古美術の取引は、数字では測れない「信頼」で成り立っています。
値段よりも大切なのは、人と人との“縁”。
ここでは、古美術商がお客様と築く信頼関係、そしてその裏にある哲学をお話しします。
「売る」より「託す」
古美術商は、単に物を売る商人ではありません。
私たちの仕事は、“作品の次の持ち主を探すこと”。
「この人なら、この品を理解してくれる」と思える方に出会えた時――
それが、商いの中で最も嬉しい瞬間です。
時には、値段交渉よりも「この品を大切にしてもらえるか」を重視することもあります。
美術品とは、人の手を経て魂をつないでいくもの。
お客様に“引き継ぐ覚悟”が感じられたとき、
その取引は単なる売買を超えて、“文化の継承”へと変わります。
買い取りの場にある物語
古美術商にとって、買い取りの現場もまた大切な時間です。
ご家族の遺品、長年のコレクション――
そこには、持ち主の思い出や生き方が詰まっています。
「手放す」ことは寂しさを伴いますが、同時に「受け継がれる」ことでもあります。
私たちは、ただ値をつけるのではなく、その“想い”を引き継ぎます。
「この品をまた誰かの手で輝かせてみせます」――
そう伝えた時に、お客様がほっと微笑む瞬間があります。
その笑顔こそ、古美術商にとって何よりの喜びです。
信頼を築くための三つの心
1️⃣ 誠実さ
どんな品物でも、偽りなく説明する。価値を誇張せず、正直に伝える。
2️⃣ 感謝の心
品を見せていただけること自体が、ご縁であり学び。感謝を忘れない。
3️⃣ 文化への敬意
古美術は「人の心を残すもの」。取引のたびに、文化に対して頭を下げる気持ちを持つ。
この三つを忘れずにいることが、信頼の礎となります。
まとめ
古美術の世界は、人の歴史と心が交差する場所。
そこでは、「誰が持つか」「どう受け継ぐか」が何より大切です。
古美術商とお客様――
その関係は、金銭ではなく“信頼と敬意”で結ばれた美しい絆。
今日もまた、静かな店内で、時を超えた品々と人の想いが出会っています